異色のビジネスモデル「通勤帰りに寄れるアウトレット」が、なぜ成り立つのか?!

 シューズラウンジ代表 上杉

「シューズラウンジ」を解剖する。

佐野、入間、大洗、木更津、はたまた御殿場、軽井沢、那須等々、アウトレットモールは花盛り。非日常のエンターテインメント性を持った商業施設として、消費者の支持を得ている。
そもそもアウトレットとは、平たく言えば、安売り店。アウトレットモールが、行楽気分が味わえる遠隔地や観光地に立地しているのには、理由がある。出店する著名ブランドやセレクトショップが、アウトレットを都市に出店したら、正規店や取引先の売上げに影響する。言ってみれば、人里離れた非日常の環境に立地してこそ、安売りの大義名分が立つのだ。
ところが「シューズラウンジ」は、違う。
現在、9店舗展開し全店舗アウトレット業態だが、そのうち7店舗が都市部SCや高級住宅地をバックグラウンドに持つ商業施設だ。最近では、新宿マルイアネックス、アトレ川崎、広島パルコなど大都市に期間限定店舗を出店している。
つまり、アウトレットが本来的に向かない立地で成立しているアウトレットが、シューズラウンジなのだ。
では、なぜアウトレットの常識を破ったビジネスモデルが可能にできたのか。
シューズラウンジ株式会社、上杉謙治社長に聞いた。

●アウトレットなのにアウトレットではない品揃えと打ち出し
 シューズラウンジ アウトレット 新宿マルイアネックス

「シューズラウンジ」は、遠隔地や観光地のアウトレットとは明らかに違う特徴がある。都市部にあり仕事帰りに立ち寄れる立地だけではない。品揃えはブランドミックス=セレクトショップで、見た目は高級家具を配置し、プロパーショップ風。なのに値札を見ると、「このブランドが、この値段?!」という割引率。見た目と異なり中身は明らかにアウトレットなのである。

つまり、帰り道に寄れる立地であることと、見た目プロパーショップ風、セレクトショップなのに、値段だけがアウトレット価格であることが、シューズラウンジを成立させているポイントなのだが、なぜ実現できているかを検証してみよう。
セレクトショップ、つまりブランドミックス・マーチャンダイジング(MD)を実現させる要は、商品調達力だ。著名ブランドの在庫品が調達できれば、集客の大きな強味になるが、著名ブランドは、直系販社や正規代理店が、直接アウトレットモールに出店しているケースが多い。また、流通経路のコントロールができない販売はしないので、在庫買取業者が著名ブランドの在庫を買い取ることは通常、不可能だ。
しかしシューズラウンジは、買い取っている。例を挙げると、ナインウエスト、スチュワート・ワイツマン、アラボン、ポリーニなどだ。上杉社長は「理由は、私が特殊なコネクションを持っているからです」と言ったが、理由の詳細は後述するとして、「また大手アウトレットへの出店は難しい中小のブランドも、在庫処分のニーズを持っています」と続けた。
靴にはサイズがあり、サイズ在庫が歯抜けになると売れ行きが極端に落ちる。どんなに巧みに商品管理を行っても100%消化はあり得ず、消化率70%なら上出来と言う人もいるくらいだ。しかし自社でアウトレットを出店するとなると、話が変わってくる。20坪以上の売場を構成するには、それなりの商品量が必要だ。しかも出店とは、販売員を確保し、継続して商品投入し魅力的な品揃えを維持しなければならない。さらにデベロッパーからも売上げを求められる。従ってアウトレットへの出店は“行うは難し”。在庫品やB品では、品揃えが維持できず、アウトレット用商品を製造、あるいは買い付けるといった本末転倒の施策が採られることもあるくらいだ。つまり一定以上の在庫品が出て、品揃えを維持できる販売規模を持つブランドでないと、アウトレットは出店できないということだ。
では、アウトレットを自社出店できないブランドは、どうするか。
「常套手段は、まずファミリーセール。しかし土・日曜日に行うケースが大半なので、社員の負担が高い。次が、俗に言うバッタ屋への売却。しかしバッタ屋は転売するので、どこで、どんな形で売られるのかがつかめない。ブランドイメージのダウンが怖く、この手段も採りにくい。加えてそもそも、余剰在庫品があること自体に恥という意識があり、商談までいたらないケースも多い」(上杉社長)。
つまり、アウトレットに常設店舗を出店できないブランドは、在庫処分のニーズを持っているが、その在庫は表に出て来にくい。その在庫を売却しようと決断させるのが、シューズラウンジのノウハウだ。

●何でも買うから実現できるセレクトショップ型アウトレット
 

ノウハウの第一は、破格とも言える買取条件だ。列挙すると
・第三者に転売せず、自社店舗で売り切る
・商品はえり好みせず全て買い取る
・既存流通網とのバッティング回避の要望に応える
・大ロットの買取にも対応可能
・サイズ欠け、端サイズ、一品物も買取可
・POP、ショッパー、什器も引き取り可
・ブランド名や割引価格がネット検索で出て来ない 等々

在庫を売りたい側が望むことにすべて応じるような条件だ。
シューズラウンジは、何でも買える調達力と、何でもかんでも売る販売力を持っているのだが、そのノウハウは、上杉社長の経歴によるところが大きい。
上杉社長は、大学卒業後、大手旅行会社へ勤務。米国へ転勤となり、その後コロンビア大学大学院でMBAを取得し米国に8年間滞在。帰国後は、外資系数社で役員として勤務後、イタリア老舗靴ブランドやフランス著名靴ブランドのジャパン社社長を歴任した。
前述した通常は買えない著名ブランドが買える理由は、この経歴にある。自身が著名海外ブランドを販売していたので、コネクションはもちろん、ブランド品販売の強み、弱み、また何に困るかを熟知している。分かっている人間が交渉するから痛いところに手が届き、“売りましょう”となる。中小ブランドも同様だ。在庫過多がビジネス展開いかに影響を及ぼし、その処分がいかに困難かを、上杉社長自身が身をもって体験していることが、シューズラウンジの調達ノウハウとなっているのだ。
さらに某社在籍時には破綻した大手靴卸の在庫60万足を売り捌き切ったという経験も持っている。
「30以上のブランドで、合皮からインポートまで幅広い商材の、メンズ・レディースシューズ60万足を特価品として売り切った経験は、シューズラウンジのビジネスに大いに活かされています。日本各地で年間300本もの期間限定ショップ・催事販売を百貨店、SC、ファッションビル、マルイ、パルコなどで行い、成功に終わりましたが、それぞれのブランドの正規店舗とかぶらないようにブランドミックスをすれば“通勤帰りに立ち寄れるアウトレット“というユニークなビジネスモデルが成り立つことが分かりました」。
言葉で言うのは簡単だが、60万足だ。中には、SS、LL、B品、こんなの誰が履くんだ?!という変なデザインもあった。それを売り切ったのだから、売るためのアイデアを出し尽くしたことだろう。「えり好みせずすべて買い取る」を買取条件に掲げられるのは、経験に基づく自信があるからに他ならない。だから「この業態を実現できたのは、在庫を穏便に処理したいブランド側の気持ちを理解し、買った在庫は最終処分場として転売せず、自社で穏便に全て売り切る販売力です」と言い切れるのだ。

●“私が見付けた掘り出し物”が満足感を増幅する
 

店頭に“1000円均一”のPOP。ビーチサンダルだったが、インジェクションという一体成型製法で世界的評価を得ているブラジル靴メーカーのブランド。日本では夏期に期間限定のワンブランドショップが開かれたりしているが、そこで使用されているラックに掛かっている。そこから正規ルートで入っていることが分かる。プレートやショッパー、什器も買い取るメリットはここにある。
奥に入ると、百貨店でしか扱われていない国内大手卸のブランド、イレギュラーサイズしか展開していない婦人靴ブランドもあれば、パリでよく見掛ける靴ブティックブランドも。また“こんなブランドも!”と思ったのが、米国では高級ブランドに属する靴デザイナーのブランドだ。米国では数十年のキャリアがあるが、最近、ミラノの高級ブティック街に出店し、気になっているブランドだった。
それが、正規価格の30〜90%オフの値付け。ブランドを知らなくても靴の品質が見分けられる人なら、「このブランド、この靴が、5000円!いいもの見付けちゃった!」と思うはずだ。

 

また、商品鮮度にも強みが。「シューズラウンジ」の標準店舗モデルは、ファッションビルや駅ビル立地なら売場面積20坪に50ブランド。ブランドは、1ヵ月ですべて入れ替える。従って特定のブランドが大きなフェイスを占めることも、占め続けることもない。店は生き物と言われるが、「シューズラウンジ」の品揃えは、常に生き、躍動している。
「シューズラウンジ」がブランドミックスのMDを採っている最大の狙いは、“宝物探し“であり“掘り出し物を見付けた!”という感動を消費者に味わってもらいたいからだ。ネット検索で店頭販売している商品が出て来ないようにしているのも。在庫を売却したブランドにメリットがあるだけでなく、“私が見付けた掘り出し物”という満足感を増幅させる効果もある。そして感動した客は、感動がもう一度、味わいたくて再来店する。しかも、再び訪れた売場のブランド構成は変わっている。新たな感動を味わう意欲が湧き、店内をくまなく見ることになる。
こうした客の購買行動を下支えするのが、接客だ。ブランド物ブティックで勤務経験のある販売スタッフを配置しているため、ファションに詳しい客とのトークも可能だし、フィッティング・アドバイスも提供できる。
加えて、店装。海外生活が長かった上杉社長のセンスは、店づくりにも表れ、輸入家具を配し、海外のコンセプトショップで使用されている壁紙を使うなどしている。これがセレクトショップの雰囲気を醸し出し、客の満足度をアップさせる。アウトレットで安物漁りをしているという感覚を全く抱かず、宝探しが楽しめるのだ。

アウトレットは、既にありふれた業態になってしまっているが、その頭に「通勤帰りに立ち寄れる」という修飾句が付いた業態を、新しいビジネスモデルとして成立させた裏には、経験が培った小売と消費者の心を知るノウハウが詰まっている。

(靴ジャーナリスト 大谷 知子)

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